2024/6/13
パートナーシップ構築宣言は、日本の企業がサプライチェーン全体での「共存共栄」と透明な取引を目指して、自社の取引方針を明確に示す取り組みです。この宣言は、大企業と中小企業が取引を行う中で、経済情勢により中小企業へのしわ寄せが起こるなど不利益を被ることへの問題を解消し、大企業と中小企業が共に成長し持続可能な経済活動を実現するために導入されました。
現在の経済社会では、物価高騰によるコスト増加は多くの下請企業を悩ます問題であり、取引においてコスト増加分の価格転嫁が望まれています。適正な取引とするために、このパートナーシップ構築宣言は価格転嫁に対してどのような影響を及ぼしているのか見ていきたいと思います。
中小企業庁により1月に実施されたパートナーシップ構築宣言のアンケート結果から下請企業調査を見てみると、多くの発注側企業が下請企業からの価格協議に応じる動きをみせており、また「下請企業の7割以上の価格転嫁ができた」と回答しています。


出典:パートナーシップ構築宣言公式サイト 取組状況アンケート結果概要(中小企業庁)
同アンケート結果より、パートナーシップ構築宣言の宣言企業側の調査においても6割以上の企業が協議に応じており、宣言を行っている企業間において価格転嫁が進んでいることが伺えます。


出典:パートナーシップ構築宣言公式サイト 取組状況アンケート結果概要(中小企業庁)
どの程度の反映されているかというと、7割以上の価格転嫁が行われていることわかります。アンケート調査のなかには、宣言企業側は都度協議を行うという企業も6割を超える積極的な姿勢があり、下請企業側もその姿勢に応えるように価格転嫁する理由について合理的に説明を行うことで、納得感のある適正な価格転嫁へと繋がっていることが伺えます。
また、パートナーシップ構築宣言の最新の調査の中で近畿経済産業局が行った管内のヒアリング調査では、価格協議に応じた企業は88%を占めており、7割以上の価格転嫁が行われています。地方での調査においても、宣言を公表している企業の多くが協議に応じての価格転嫁が進んでいます。

出典:近畿経済産業局 下請Gメンによる「パートナーシップ構築宣言」企業のヒアリング調査結果について
宣言企業と下請企業の協議には価格転嫁以外にも「振興基準」をふまえた内容を行います。その取組の各項目のなかでも特に評価が高い項目が以下に記されています。

出典:パートナーシップ構築宣言公式サイト 取組状況アンケート結果概要(中小企業庁)
価格転嫁については宣言企業側からの積極的な発信を行うことが高く評価されている傾向があります。こうした結果は、宣言を公表したが取組の具体的な手段に悩んでいる宣言企業にとっても今後の方針の参考になる指標です。
近畿経済産業局によるパートナーシップ構築宣言についての調査では、3月29日時点で43,750社が公表を行っており、特に資本金3億円以下の企業がパートナーシップ構築宣言を公表する動きは2023年から急激に伸びています。

出典:近畿経済産業局 下請Gメンによる「パートナーシップ構築宣言」企業のヒアリング調査結果について
2024年6月13日時点では宣言を公表している企業が48,069社と、上記の調査時点から約3カ月間で4,000社以上も増えています。多くの企業がパートナーシップ構築宣言に参加し、今後も増加の動きがあることが伺えます。
適正な取引を行う上でその成果も見え始めているパートナーシップ構築宣言ですが、公表することによるメリットも様々です。公式ポータルサイトへの掲載が行われることやロゴマークが名刺などにも使用できるようになり、取引先や消費者へホワイト企業であることのアピールを行いやすくなるとともに、補助金や税制優遇など事業に関わりの深い施策に対しても有利に取り組むことができるようになっています。
具体的には以下のようなメリットがあります。
「企業の信頼向上」
宣言を行うことで、企業の取引先や顧客に対する信頼が向上し、企業イメージの改善につながります。
「補助金や税制優遇」
宣言企業は各種補助金の加点措置を受けることができ、賃上げ促進税制の適用も受けやすくなります 。
「SDGsの達成」
持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する取り組みとして評価され、企業の社会的責任(CSR)の向上につながります 。
「取引先との信頼関係強化」
下請け企業と公正かつ透明な取引を行うことで、強固な信頼関係を築くことができます。
補助金では各省庁が実施する補助事業において、多くの補助金や助成金でパートナーシップ構築宣言による加点や優遇措置は取られてきました。また、各自治体の取組の中にも優遇措置対象となる補助事業もあります。
——加点、優遇措置の事例——
事業再構築補助金(中小企業庁)
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(中小企業庁)
令和6年度 ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業(資源エネルギー庁)
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金(資源エネルギー庁)
工場・事業場における先導的な脱炭素化取組事業のうち、企業間連携先進モデル支援(SHIFT事業)(環境省)
見本市等出展支援助成金(広島県)
令和6年度 中小・ベンチャー企業チャレンジ応援事業助成金(広島県)
SDGsの取組についても、5つの項目の達成を果たすことにつながります。
Goal3 | すべての人に健康と福祉を |
Goal8 | 働きがいも経済成長も |
Goal9 | 産業と技術革新の基盤を作ろう |
Goal10 | 人や国の不平等をなくそう |
Goal17 | パートナーシップで目標を達成しよう |
実際にパートナーシップ構築宣言を行うには、下請け中小企業振興法に基づく「振興基準」をふまえた以下の取組を行うことになります。
「価格決定方法の透明化」:取引先との価格交渉を公正に行い、適正な価格を設定すること。
「コスト負担の公平化」:型管理などのコスト負担を適切に分担すること。
「支払条件の改善」:手形などの支払条件を適正に設定すること。
「知的財産の保護」:取引先の知的財産やノウハウを尊重し、適切に扱うこと。
「働き方改革への対応」:働き方改革に伴う業務のしわ寄せを防ぐための取り組み。
2024年3月にパートナーシップ構築宣言のひな形が改定されているため、「価格決定方法」において下請事業者の要請がない場合でも「下請事業者と少なくとも年に1回以上の協議を行う」という内容が改正されています。
パートナーシップ構築宣言の取組内容に関して実施できてない場合についてですが、現在のところ罰則が特に定められていません。ただし、国から「振興基準」に基づいた指導または助言が行われた場合など、本宣言が履行されていないと認められる場合には、本宣言の掲載が取りやめになることがあります。宣言が形骸化しないように、自主的に実行状況を定期的に評価し、必要に応じて改善を行うことで実効性を上げていくなどの取組も重要です。
参加の手順については以下の通りです。
公式ポータルサイトから、記載要領とひな形をダウンロード。
自社の取組内容に合わせて宣言文を加筆及び修正。企業名と代表者名の氏名と役職を記載。
公式ポータルサイトで宣言の登録フォームから必要事項を入力後、PDF化した宣言文をアップロード
登録内容に問題がなければ、登録及び公表されます。
パートナーシップ構築宣言に参加することで、企業の取引先に対する信頼性が向上し、サプライチェーン全体での公正かつ透明な取引が促進されます。特に物価高騰が続く現代において多くの企業にとって重要である価格転嫁においては下請企業側からも高評価と歓迎されており、大企業・中小企業関係なく「共存共栄」を目指そうとする動きは今後も加速していくのではないでしょうか。
また、補助金の加点措置や税制優遇等をうけることができるなどのメリットもあります。宣言の公表によって国や自治体の補助事業に対して積極的に参加しやすくすることで、宣言企業の発展を後押しする体制も進められています。
宣言の効果も着実に見えてきており、政府しても今後より一層の適正な取引環境を築くべくパートナーシップ構築宣の拡充は行われていく方針です。適正な取引環境は企業間の信頼関係も築くためにも重要な役割を果たしてくれています。この機会に、パートナーシップ構築宣言への参加を検討してみてはいかがでしょうか。
資料出典・引用元
近畿経済産業局 下請Gメンによる「パートナーシップ構築宣言」企業のヒアリング調査結果について
https://www.kansai.meti.go.jp/2chuusyou/shitauke/kakakutenka.html#tyousakekka
パートナーシップ構築宣言 取組状況アンケート結果概要(中小企業庁)
https://www.biz-partnership.jp/merit/index.html#effect